2008年05月

裁定取引という考え方

裁定取引とは、これまで主に金融市場で使われることが多かった言葉です。ニュース等でお馴染みなのは、日経平均先物と現物との間で行われる裁定取引に関するコメント。例えば、「裁定取引解消に伴う大量の現物売りが出て.....」なんてコメントはよく耳にしますね。

私は昔に外国為替市場での仕事を9年程やっていましたので、裁定取引と聞いてすぐに思い出すのは、2国通貨間におけるマネーマーケットでの金利差と為替SWAPマーケットにおけるSWAP POINT との間で行う取引です。

要するに裁定取引とは、同一の性格を持つ商品の理論価格と実際価格の差を、理論上はリスク無しに収益獲得する取引のことです。裁定取引のチャンスは本当に様々な要因で引き起こされます。そのあたりの話は、是非専門書などで....。

さて、最近この裁定取引という言葉を、金融以外のビジネスで使っている人を2人発見しました。

まずは、「日経ビジネス4月28日、5月5日合併号」の54ページ、大証ヘラクレス上場のマンション流動化事業を行う「スター・マイカ」に関する記事の中で。

ファミリータイプの中古マンションは、同じ条件でも入居中の方が入居していない場合の方より価格が平均して2?3割安いことに目を付け、創業者の方は以下のようなビジネスモデルを構築したそうです。

●入居中の物件を1室単位で購入する。
●入居中は家賃収入を得る。
●退去後に売却をする。
⇒つまり、物件の保有期間中は賃料収入を、売却時には売却益を得るということ。

この会社の創業者の方は、「不動産屋から居住者のいる部屋と空室で価格差があると聞いた時、金融の裁定取引と同じだと直感した。」とのコメントを寄せています。この方の経歴はこちら。やっぱり金融出身だったですか。

次に、最近話題の公認会計士で経済評論家の勝間和代さん。著書の勝間式「利益の方程式」を読みました。副題の「商売は粉もの屋に学べ」の副題たる根拠が本文中では見つからず、東洋経済新報社のトレンドを意識した策略を感じる1冊ですが、中身は面白かったです。直ぐに実践に活用させて頂きました。

この本、只今知人に貸し出し中の為、正しい引用をここでは出来ませんが、要約すると以下のようなことが書いてありました。

ある企業家が新しい分野のビジネスに乗り出す、その企業家は当面先行者としての利益を享受する。しかし、その後参入する企業が出てきて、価格競争に巻き込まれる。それから後は利益を得られるのが難しくなる。最初に利益が得られたのは、時間という裁定取引だった。

ナルホドねぇと。なんだ彼女も金融出身なんですね。

金融出身の人が好んで使う言葉なんでしょうか。

私も彼らと近い感覚でビジネスを捉えることが有ります。世の中には裁定取引が可能な物が結構転がっていると感じています。だからと言って、直ぐに参入するのはそれなりの障壁が有ったりしますので難しいわけですが。更に昨今は、インターネットによる情報伝達速度の平準化が実現していますので、ある特定の分野、地域において裁定取引が可能であることは直ぐにバレちゃいます。また、後発が参入してくるスピードも追い上げてくるスピードもとても速いことを合わせて言わなければなりません。

だから、裁定取引の可能性を感じて参入し、それなりの利益を享受したとして、その後どうするか。それが鍵となりますね。多額の投資を覚悟してシェアを握り、プライスリーダーとなってしまうか、新たなる裁定取引にチャレンジするか。結構骨の折れることです。

それではこれを苦痛と感じるか?

Absolutely not!

新しい価値を創造し続けなければならない企業家にとって、そんなことは苦痛の部類には入らないでしょう。
かつてシュンペーターも言っておりました。

企業家とはすでに行っていることをより上手に行うことよりも、全く新しいことに価値、特に経済的な価値を見出す人であり、それは権威に対する否定でもある。つまり企業家とは、秩序を破壊し解体する者である。つまり創造的破壊だ。それは企業家の責務である。

m(_ _)m スミマセン。↑この一節、シビレマス。やる気みなぎります。シュンペーターの墓参りに行きたくなります。

よっしゃ、立派な企業家になろう。

投稿者 島上 : 2008.05.30 12:36 | コメント (0) | トラックバック (0)

「お客に聞け!」このフレーズを最近よく見かけます。コレ中小製造業でも使えますよ。

ネット通販の世界では、定期的なメールマガジンの配信が欠かせないです。
テキストメルマガ、HTMLメルマガ、携帯メルマガ等、何だか一週間ずっと配信している感覚で、たまに疲れてネタに困ってしまうという方も多いはずですね。

そんな時メルマガ担当者は、再度お客様からの声の中にヒントを見つけに行きます。果たして自分の店の強みは何なんだろうと。「ネタはお客の声にある。」

転じて、製造業の会社の場合はどうでしょう。

先日、複数の製造業の会社様に金融機関の支店長と一緒に訪問しました。先方のご希望は「ネットを通した新規取引先の拡大」でした。静岡県西部地域はこれまで、どちらかと言うと大手メーカーに繋がる既存取引先からの受注に依存している割合が多かったので、自ら新規取引先を営業して獲得するといったアイデアに乏しい地域でした。中には「うちにはそもそも営業が居ないんだョ。」とか、「上からの仕事が結構来ているので、こちらから仕事を取りに行く必要が無いんだョ。」という言葉も去年までは結構聞きました。

地域の製造業の経営環境が変わって来たな...。

さて、新規取引先を拡大するためにWebサイトをリニューアルするということになると、コンテンツに知恵を絞らなければなりません。つまり、「何を打ち出すべきか」。だから、その会社様が同意されるなら中長期経営計画書なんてものも拝見させて頂きます。経営者の将来に対する判断が読み取れますから。あるいは、担当の当社コンサルティング営業社員が作業服をお借りして、実際に製造ラインで現場研修をさせて頂くこともよく有ります。そのような中で、webサイトで表現すべきコンテンツを探って行くのです。※工場長の自慢話は結構ネタになるのです。プライド持って仕事を何十年もしておられる方ですから。

それからもう一つ。「これまで御社の業歴は約40年有ります。この40年を支えて来た御社の強みは何ですか。」と社長さんに問います。この問いにスムーズに応えられない社長さんは結構多かったりします。「特に凄い技術力が有るというわけでは無いし、真面目にコツコツとやって来ただけだョ。」との謙遜混じりの回答が殆ど。

「じゃぁ、上得意のお客様のご担当者を数人ご紹介下さい。私達が、何故御社と取引をしているのか理由を調査して来ます。」

私の今までの経験から言うと、会社側が思っている自社の強みと、お客様サイドが感じているその会社の強みにはギャップが有ることが多いです。技術に自信がある製造業者と取引がある会社を訪問して聞いたところ、「あの会社と取引をしている理由は、担当者がまず期限を守って仕事をしてくれること、そして、出来ないことを安請け合いしないということ。だからあの会社は安心なんだ。」のような回答を得ることもしばしば。

この製造業の会社の取引先にとっての強みは、担当者の正確で誠意の有る仕事から来る安心感ということになります。お客が一番知っているというのは、消費者向けビジネスでも企業間ビジネスでも同じなんですね。

投稿者 島上 : 2008.05.27 10:45 | コメント (0) | トラックバック (0)

お客さんは選ばなきゃ大変なことになってしまう。

「お客を選ばない」とYahoo!で検索してみる。表示上位は、「お客を選ばないから良く売れる」、「お客を選ばないリーズナブルな価格」、「お客を選ばないどなたにも受けるおしゃれ着」、「マイルドで食べやすく、お客を選ばない....」のような、商品の供給サイドからの情報が半分以上を占める。

そうですか....。

私はこう思います。昨今、お客さんを選んで商売していかないと大変なことになる。それは、クレームを巡る不幸な悪循環に巻き込まれるリスクです。

この悪循環をインフラとして支えるのがインターネットです。本来クレームは歓迎すべきお客さんからのラブレターです。今も私はそう思います、しかしながら、インターネット出現前と後ではかなりこちらの選択眼が要求されるようになったと思います。ご自身のビジネスとしてインターネットを積極的に活用していても、あるいはそうで無くても。

以下あくまでも個人的な意見です。

まず、インターネット出現前のクレームにはコストと時間がかかりました。クレームを出す方は、かなりの負荷を乗り越えて来ているわけです。お客様センターの営業時間に合わせて電話をかける、あるいはその会社の経営者に手紙を送る、またお店を訪問する等。エネルギーをかなり使います。そして、実行に移すまでそれなりの時間を費やしているわけです。そして、そのお客さんが不快な思いをされたり、欠陥商品を受け取った直後からはそこそこ時間が経過していますので、感情の冷却期間も存在しています。でも、やっぱり我慢できないと思い実行に移しているのです。そう考えると、商売をさせて頂いている立場からは、「まずもって、申し訳有りません。そして有難うございます。」という対応が当然のものとして発生します。だから、クレームを契機にロイヤルカスタマーとなるお客さんが出てくるのです。

そして、インターネット出現後のクレームには、コストも時間もかかりません。そして相手と対面する必要も有りませんので、精神的負担も有りません。もちろん感情の冷却期間も有りません。しかも、その気になれば、インターネット上のあらゆるサイトに悪評を流すことができますし、ネット商店街等に出店しているネットショップに対しては、悪いレビューを残し、その店の売上高にダメージを与えることもできます。「キレル消費者」は確実に増加しています。

理不尽な「キレル消費者」が何故増えているのか?更に突っ込んで考えてみると、以下の要因が浮かびます。

●インターネットショップのサービスの高度化。⇒かつて、ネットショップは中小零細企業ほど勝てると言われた時代が有りました。経営者自ら必死で運営するショップのレベルが高かったのは当たり前です。何でも正確が当たり前のネットショップの世界に慣れてしまった消費者の要求レベルはどんどん上がっています。メールでの問合せに対するショップ側からの返答までにかかる時間に対して、我慢できる時間はせいぜい半日とも言われています。
私は、こんな経験もしました。
「さっきメールで問合せしたんですど.....。何で返事をくれないのですか?」と電話。そのメールは30分前のメールでした。
また、「12時ちょうどの配達をお願いしたのに、まだ宅配業者が来ないんですけど。大丈夫ですか?」11時58分のこと。

●消費者は実店舗で大切にされていない。
⇒小売、サービス業の現場は非正社員が支えています。やはり正社員とは働くスキルや専門知識の面で異なるのは否めません。「痒いところに手が届くサービス」や「全く気の利いた一言」など、イマドキなかなか期待できません。一方ネットショップでアクションを起こすと、相手は自分がどれだけ大切なお客であるかをわかってくれた対応が待っています。専門的アドバイスもくれます。ネットショップ側では、顧客データベースを見て対応しているわけですが。当然、消費者は小売、サービス業に対する全体的な要求レベルを上げてきています。

その結果、現場は様々なクレームに接することになり、熟練していない若い社員などは、クレームは怖いもの、面倒臭いもの、とマイナスイメージを先行させてしまい、その心理が益々対応をマズイものとさせていき、最後は泥沼へと。本来誠実に対応しなければならないお客さんが多く居るのも関わらず。全くの悪循環。

では、この悪循環を好循環に変えるためにはどうするべきなのか?

⇒やはり、カスタマーオリエンテッドな発想を徹底し、どんどん上がっていく消費者の要求に対応していかざるを得ません。
⇒クレームには理不尽なものも数多く含まれるが、まずは相手に冷静になってもらう手続きをルール化し、大切なお客さんを逃さない仕組みを作らなければなりません。

そして⇒「キレル消費者」を取り込むリスクを少しでもミニマイズすること。つまり、お客さんを選ぶということ。そもそも、マーケティング活動の中で、「本来、当社の商品やサービスはこのような方にご利用頂きたい。」という具体的なターゲットを設定しておられるでしょうか。今流行りの「ペルソナマーケティング」に近い発想かもしれません。但し、「ペルソナマーケティング」はデータ分析の結果導き出される点で、「利用して欲しい人」の設定とは全く異なるわけですが。

つまり「利用して欲しい人」を念頭に置いて、その人に共感してもらえるような表現や打ち出し方をしているかどうかである程度「キレル消費者」の取り込みリスクをミニマイズできると、私は感じています。そして出来ない事を事前に知らせておくことも、必要かも知れません。もちろんそれは会社のWebサイトでも行うことです。

また、「利用して欲しい人」を設定してマーケティングをする事は、現代マーケティングの第一人者であるコトラーの定義からも理に叶ったことだと考えます。

マーケティングとは、「個人や集団が製品や価値の創造と交換を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセスである。」

消費者のニーズやウォンツの充足をマーケティングの出発点と捉えているわけです。その消費者のニーズやウォンツは全く多様化してしまっているわけだから、ある消費者にとってはとても価値の高いものであるが、別の消費者にとっては全くどうでも良いことだったりすることがあるわけです。またその逆も有ります。「利用して欲しい人」を設定してマーケティングしないと、本来クレームとはならないことがクレームになってしまうことも有るということでは無いでしょうか。

投稿者 島上 : 2008.05.11 14:07 | コメント (2) | トラックバック (0)

全国賃貸管理ビジネス協会東海支部の御一行様

昨日は、当社のYour-Agent事業で加盟をしている、全国賃貸管理ビジネス協会東海支部の御一行様が、当社の空中不動産店舗を見学にいらっしゃいました。



まずは、当社が主力の事業としてどのようなことを行っているのかということと、ネット不動産仲介業を始めることとなったきっかけやその後の推移をセミナールームでお話させて頂きました。皆さん、東海地区で手広く不動産業をやっておられる事業の大先輩の方々なわけです。緊張はしませんでしたが、何だか妙な感じでした。
普段のセミナーでは、そもそも絶対的な自信を持ってお話するわけですが、私は不動産仲介業を始めたばかり。何だか気恥ずかしいと言いますか......。「教えて下さい。」とか、「私を1ヶ月丁稚として預かって頂けませんか?」とか連発してましたよ。

そして、店舗の見学。「えっ、これが店?」とある方の第一声。ん?っ、グッと来て頂けましたか。この店には飛び込みのお客さんはいらっしゃいませんので、これで良いと思ってます。でも矢継ぎ早に色々質問を受けてしまい、少々タジタジに。ええ、始めたばかりですから、今後色々変わると思います。是非先輩方にお教えを頂きながら。

投稿者 島上 : 2008.05.10 10:41 | コメント (0) | トラックバック (0)

Retail is detail.

もう14年も前のことです。私は、旧あさひ銀行のディーリング研修生として1994年にシカゴのCBOTCMEに研修へ行く機会に恵まれました。この経験は、人生にとって計り知れない影響を与えてくれました。当時の銀行の制度と推薦をして下さった当時の上司には心の底より感謝をしています。

シカゴでは、もう一つ人生を変えるきっかけとなった経験が有りました。それはCBOTの手前2ブロックほどのところ、S Lasalle Stを東にちょっと入ったところに有ったスターバックスコーヒーとの出会いでした。いつかは小売業で独立したいと考えていた私は、当時スターバックスの店が醸し出す独特の価値観の虜となり、脱サラをする前には、是非スターバックスで修行をしようと考えるようになりました。恐らく日本に進出してくるだろうから、そのタイミングで。

1996年夏、スターバックスコーヒージャパンは、東京銀座に日本1号店を出店しました。この時私はシンガポールにおり、日本経済新聞のシンガポール版でこの事実を知りました。早速日本における責任者の名前を日本にいる友人に調べてもらい、初代社長に雇って頂けるよう手紙を書きました。

社長の秘書から「直ぐに会いたい」という手紙が返ってきて、しばらくして土日を利用してこっそり東京に帰国し、社長と会いました。その際の先方の希望は、財務の責任者としてのポジション。こちらとしては、小売業を一から勉強したいわけなので、財務責任者では今までの仕事とあまり変わらないことになってしまいます。

社長:「あなたの興味は、財務では無かったのですか?」

私:「ええ。小売業を末端から、1人の店員からスタートしたいです。」

社長:「君の年齢や経験は殆ど活かされないわけです。従って、平社員としての給与しか払えません。」
    「しかしなぁ.....」 

これが第1回目の面接の内容でした。
その後2回の週末帰国で面接をし、手紙も4度ほどやり取りしましたでしょうか。

1998年春、電話で連絡が来ました。

「関西1号店を年末に開店する予定があります。そんなに現場がやりたいのであれば、この1号店のストアマネジャーをお任せすることを前提として当社に入社しますか?あなたには小売業としての経験は無いが、あなたの基礎能力を評価して、店舗運営部課長待遇ということでいかがでしょうか?」
※スターバックスコーヒージャパンのサイトに日本での沿革が掲載されていますョ。

ありがたいお話を頂きました。そうは言っても銀行に居たときに比べると年収は45%ダウンでした。

1998年7月から、東京の六本木や日比谷等の繁忙店での研修を受け、厳しい4ヶ月を過ごしました。そんな中、社長からディナーのお誘いを頂き、ご一緒させて頂きました。そこで言われたのがこれ。

「Retail is detail. 」

この言葉、強烈に身に染みてます。ええ今でも。と言いますか、年を重ねるほど益々です。小売業は細かいことの積み重ね。細かい気遣いが出来なきゃ小売業では無いのです。

シーエムエーを設立して間も無く8年となります。「あそこが足らなかったな、こう対応しておけば良かったな、どうして社員のA君はあそこに気が付かなかったのかな、どうすればもっとこの哲学を社内に浸透させられるのかな.........。」頭の中に次々と改善するべき出来事が発生します。それは経営者の宿命でしょう。しかも私は創業者なんだから。コツコツやるしかないのです。ひょっとすると、私の一番大切な仕事なのかも知れません。


今朝、リテールバンクを標榜する某銀行の支店に行きました。壁の複数箇所に支店の責任者の写真とコメント、そして名前が貼り出されていました。写真と名前とコメントは、それぞれ別の紙に印刷されたもので、それぞれを切り貼りして1枚のポスターのように仕上げてあるものでした。それぞれを切った大きさや形がバラバラ乱雑で、しかも各縁に平行に貼られていないので、それはあたかも子供の貼り絵状態。どう見ても、上から嫌々やらされた感が満載。

少なくても支店ロービーでこれを目にした人は、この銀行のあらゆる分野でのレベルを疑うでしょう。

「Retail is detail. 」

投稿者 島上 : 2008.05.07 12:29 | コメント (0) | トラックバック (0)